遺言書の作成

遺言書の作成方法としては、一般的に①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類(普通方式といいます)があります。実務上は、①と②がよく利用されるため、以下①と②の内容を記載します。


まず①の自筆証書遺言(民法第968条)は、一般の方がイメージされる遺言の方式で、書面に自筆で書く遺言書です。
簡単に作成することが可能な遺言方式ではありますが、遺言書は全て様式が民法で定まっているため、様式を守らないと無効になってしまう可能性があります。例えば、日付が抜けていたり、押印がないなどの場合は無効となります。また、全文自署する必要があるため、パソコンなどで作成してもいけません(ただ、財産目録についてはパソコン等で作成することが可能です、民法968条2項)。
無効な遺言書を作成してしまって、気がつかずに亡くなってしまうと取り返しがつかないですし、保管中に紛失してしまうリスクもありますので、自筆証書での遺言を作成する場合には、以下の遺言書保管制度を利用することがおすすめです。

遺言書保管制度とは、自筆証書にて作成した遺言を法務局で預かってもらう制度です(手数料は1通3,900円、遺言書保管法)。
保管申請後は、遺言書の原本は遺言者の死後50年間遺言書データは 150年間保管してもらえます
紛失のリスクがなくなりますし、保管申請の際に形式面をチェックしてもらえるので、上記のデメリットが解消されます。また、自筆証書遺言では通常必要な家庭裁判所の検認手続が不要となります。ただし、遺言書の内容面の適性については見てもらえないため、内容面について心配な方は専門家に相談することがおすすめです。

次に②の公正証書遺言(民法第969条)とは、公証役場を介して、公正証書により作成する遺言のことです。
単に公正証書で作成するというだけでなく、公証人という法律の専門家が関与するため、方式の不備により遺言が無効になることもありませんし、内容についても法的な適正を確認してもらえます。また、自筆証書遺言では自署が必要でしたが、公正証書遺言は、字が書けない人や口がきけない人、耳が聞こえない人でも有効に作成することができますし、入院中の場合など公証人に病院に来てもらって作成することも可能です(出張費がかかります)。さらに、遺言書原本は公証役場で保管されるため紛失のおそれがなく、家庭裁判所の検認手続が不要となります。
デメリットとしては、公証役場の手数料がかかることや証人が2名必要など、手続がやや煩雑になることです。

なお、遺言作成後も遺言者の気持ちが変わることがありうるため、生前はいつでも遺言を撤回することも書き替えることも可能です(民法第1022条)。自筆証書遺言の場合は単に遺言を破り捨てるだけで撤回できます(民法第1024条前段)が、遺言書保管制度を利用した場合には法務局にて撤回書の提出が、公正証書遺言を利用した場合には公証役場にて手続が必要となります。ただ、複数遺言を作成した場合で内容が抵触する場合は、後の遺言が優先されるため(民法第1023条1項)、公正証書遺言を作成後に、それを否定する内容の自筆証書遺言を作成することで事実上撤回することは可能です。ただし、遺言者の最終意思の判断が複雑になるため、撤回の際にはきちんと手続きをとり、1つの遺言書として残すべきでしょう。

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