胎児の相続権

人の権利能力は出生により生じる(民法第3条1項)ため、まだ生まれていない胎児には基本的に権利能力がありませんが、相続権については例外的に認められています(民法第886条1項)。

例えば、Aの妻Bに胎児CがいたがAが亡くなった場合、仮に胎児に相続権がないとすると、Cが生まれた後にAが亡くなった場合にはCはBとともにAを相続する(民法第887条1項、第890条、第900条1号・相続分は各2分の1)のに対し、Cが生まれる前にAが亡くなった場合にはC はAを相続せず、相続人が妻Bと(次順位以降の)Aの親や兄弟姉妹が相続人となってしまうことになり(民法第889条1項)、少しの違いで相続人が変わってしまい、ひいてはCの将来にも影響が出てきてしまいます。そのため、胎児には例外的に相続権が認められています。

相続登記の申請においては、上記Cが生まれてから登記申請を行うこともできますが、先に対抗力を得るために胎児名義で相続登記を行うことも可能になっています。(上記例では、BとCとの持分2分の1ずつの共有名義となります。)ただし、胎児はまだ氏名を持たず当然住民登録もされているわけではないため、住所についてはBと同じ住所で、氏名については「B胎児」となります。(以前は「亡A妻B胎児」でしたが、法務省民二第538号令和5年3月28日により変更となりました。)

そしてCが生まれた後は、氏名を「B胎児」のままにしておくわけにはいかないため、登記原因を「年月日出生」として所有権登記名義人の住所氏名変更登記を行います。住所については実際には変更がない場合でも、仮でBの住所で登記しておいただけのため、住所と氏名の両方の変更登記が必要となります。

また仮にCが死産となった場合には、元々Cは相続人とならなかったことになり(民法第886条2項)、登記原因を「錯誤」として妻Bと(次順位以降の)Aの親や兄弟姉妹を登記名義人とする所有権更正登記を行います。

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