根抵当権の元本確定

根抵当権の元本確定とは、根抵当権の被担保債権が特定され、確定することです。

根抵当権は、抵当権と異なり、設定時に被担保債権が特定していないところに特徴があり、元本確定までは被担保債権が入れ替わる可能性があります。例えば、事業を行っていて、仕入れの買掛金が発生し、後日その支払いを行うということを繰り返す場合に、その都度抵当権を設定して、支払いにより抵当権が消える(付従性)ということを繰り返すことは不便であるため、根抵当権により一定範囲の債権についてまとめて担保権を設定することが可能となっています。

しかし、根抵当権を実行する段階では、後順位担保権者との配当の配分の関係もありますし、根抵当権者や根抵当権設定者が亡くなった場合等には、その当事者間での取引は今後なくなるため、(取引関係を承継することは別として)新たに被担保債権が発生することはなくなります。そのため、一定事由の発生により、根抵当権の元本が確定することになっています。また、当事者間で元本確定日を定めることもできますし、定めがなくても、根抵当権設定当事者から元本確定請求をすることも可能となっており、その場合にも元本が確定します。

元本確定事由としては、例えば、根抵当権者が当該不動産につき競売による差押えを申し立てた場合(民法第398条の20第1項1号)や根抵当権者や債務者に相続があったが、次の根抵当権者(指定根抵当権者)や債務者(指定債務者)の合意登記を相続から6ヶ月以内に行わなかった場合(民法第398条の8)などです。また、元本確定期日の定めがある場合はその日に元本確定します(民法第398条の6)。さらに、元本確定期日の定めがない場合も根抵当権者はいつでも元本確定請求できますし(民法第398条の19第2項)、根抵当権設定から3年経過していれば根抵当権設定者も元本確定請求をすることができます(民法第398条の19第1項)。根抵当権者と根抵当権設定者で請求要件が異なるのは、元本確定は本質的には設定者(不動産所有者)側に有利なことだからです(設定後すぐに設定者から元本確定請求ができると、根抵当権により担保設定をした意味がなくなります)。

根抵当権の元本確定が生じると、根抵当権の性質が変化し、被担保債権に対する付従性随伴性が生じます。そのため、被担保債権が弁済により消滅すると根抵当権も消えますし、被担保債権が全て債権譲渡により移転すると根抵当権も移転します。また、根抵当権の全部譲渡(民法第398条の12第1項)や分割譲渡(民法第398条の12第2項)など、根抵当権特有の処分はできなくなります。この点で、元本確定後の根抵当権は抵当権の性質に近くなりますが、特定した被担保債権の利息・損害金については極度額まで担保される(民法第398条の3第1項、極度額は登記されているため、後順位担保権者に不測の不利益はない)点で、最後の2年分しか担保されない抵当権(民法第375条)とは異なります。

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