相続放棄
相続放棄とは、法定相続人の方が、被相続人の財産を相続したくない場合に、家庭裁判所における手続により、相続財産を一切相続しないこととする制度です(民法第915条、第938条)。
相続財産には、プラスの財産(預貯金等)だけでなく、マイナスの財産(借入金等)がある場合があるため、相続人としては相続放棄をすることで、相続によって被相続人の借金を負うことを免れることができます。相続放棄を行うと、「初めから相続人とならなかったもの」(民法第939条)となるため、プラスの財産だけ相続し、マイナスの財産だけ相続放棄をするということはできません。
また、相続人が相続放棄を行い、初めから相続人とならないこととなった結果、本来は相続人ではなかった方が相続人となる場合があります。法定相続には順位があり、被相続人の配偶者は常に相続人となり、合わせて①子がいる場合は子(子が亡くなっていて孫がいる場合は孫)、②子供も孫もいない場合は直系尊属(父母や祖父母)、③直系尊属もいない場合は兄弟姉妹、となります。例えば、もし被相続人に妻と子が一人いて(孫はいない)、父母がいる場合は、本来妻と子が相続人となりますが、もし①の子が相続放棄をすると、妻と②の父母が相続人となります。そのため、被相続人に多額の借金があり、誰もが相続しない様にするには、配偶者及び①②③の全員が相続放棄をする必要があります。
相続放棄の手続は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所において行う必要があります。短い期間制限があることと、単に放棄をすると宣言しただけでは相続放棄できませんので、注意が必要です。また、この期間内であっても、相続財産を勝手に処分したりすると、相続する意思があるとみなされて相続放棄をすることができなくなります(法定単純承認・民法第921条)。
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