合同会社の社員の相続
合同会社の社員が亡くなった場合、その社員は退社することになり、社員の相続人が代わって社員とはならないのが原則です(会社法607条3号)。但し、あらかじめ定款規定を設けておくことで、相続人が持分を承継し社員となることが可能です(会社法608条1項2項)。
合同会社の社員は株式会社の株主と異なり、会社の構成員であるとともに、原則的に業務執行権があり(会社法590条1項)、会社経営に直接関与することになります。そのため、合同会社の社員が誰であるかはその人の個性が重要となるため、その持分(社員たる地位)を譲渡するためには原則、他の社員全員の承諾が必要となっています(会社法585条1項)。社員の相続の場面でも、その相続人が社員としての適性が必ずしもあるとは限らないため、相続人が持分を承継するためにはその旨の定款規定が必要となります。その場合、定款規定があれば実質的には他の社員の同意があるといえ、持分承継に原則他の社員の承諾は不要です。(定款変更には原則総社員全員の同意が必要(会社法637条))
社員が複数名いてそのうち1名が亡くなった場合であれば、上記定款規定がなくても、その社員が退社するのみで当然会社は存続することとなります。しかし、社員が1名のみの合同会社は定款規定がないと、社員がいなくなってしまい、「社員が欠けたこと」として会社の解散事由に該当する(会社法641条4号)ことになります。この場合、清算人になる人もいないため、利害関係人の申立てにより裁判所が清算人を選任し、清算手続が開始されます。そのため、社員が1名のみの会社の場合で事業を承継していくためには、定款規定を設ける検討が必要です。
上記定款規定がある場合、仮に被相続人となる社員が業務執行社員や代表社員であった場合(業務執行社員や代表社員を定めている場合)でも、相続人は持分を承継するのみで、業務執行社員や代表社員たる地位も相続するわけではありません。そのため、その相続人が業務執行社員となるためには、持分を承継した後に定款変更を行い、業務執行社員として定める必要があります。また、相続人が複数いる場合、例えば社員Aが亡くなって相続人がB及びCの2名いる場合は、Aの持分をB及びCが法定相続分に従い相続し、持分を準共有することになります。この場合、権利行使者を一人定めなければ、会社の同意を得ない限り、権利を行使することができません(会社法608条5項)。
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