信託財産である不動産の売却
家族信託(民事信託)契約における信託財産である不動産の売却は、所有権登記名義人である受託者が売主となって、買主と売買契約を締結します。また所有権移転登記の登記義務者も所有権登記名義人である受託者となりますが、登記申請の際に信託登記の抹消登記も同時に(不動産登記法104条1項)行う必要があります。
例えば、親を委託者兼受益者、子を受託者として家族信託契約を行い、親名義の不動産(実家)を所有権移転及び信託登記(不動産登記法98条1項)により、形式上子の所有権名義に移した後に、親が施設に入所するなどで実家の売却が必要となった場合、子である受託者のみで売却を行うことが可能です。その際に(信託契約内容にもよりますが、)親である委託者の同意は原則的に不要です。そのため信託不動産の売却においても、通常の売買による所有権移転登記と同様の手続きとなりますが、不動産自体は信託財産から外れることとなりますので、信託登記の抹消登記も同時に行う必要があります。買主としても通常の売買契約と同様で、信託登記は抹消された状態で所有権を取得することとなります。
不動産を売却した場合に買主から受け取る金銭(売買代金)は、子である受託者のお金になるわけではなく、金銭を信託財産として引き続き管理することになります。(通常は信託口口座に入金して管理することになります。)そのため、売却して金銭になっても、その金銭は受益者のために管理・処分を行いますので、親の施設費用や生活費などに使用することとなります。
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