家族信託(民事信託)における受託者の分別管理義務

家族信託(民事信託)において、受託者は、信託財産に属する財産と自身の財産(固有財産)とを、分別して管理する義務(分別管理義務)があります(信託法34条1項柱書本文)。

家族信託契約が成立すると、受託者は委託者の財産を預かり管理し、受益者のために信託事務を行うことになりますが、財産の管理は受託者自身の財産(固有財産)と分けて行わなければなりません。信託契約においては、通常の財産管理契約と異なり形式上は受託者名義としますが、贈与を受けているわけではないため、その固有財産と混ざってしまうと受託者が自分の利益のために財産を消費してしまうなど、信託契約における目的達成ができないことになってしまう可能性があるため、この様な義務が課せられています。

管理方法として具体的には、①信託登記又は登録をすることができる財産については、登記又は登録(信託法34条1項1号)、登記又は登録をすることができない財産として、②動産については、「外形上区別することができる状態で保管する方法」(信託法34条1項2号イ)により保管、③金銭その他の財産については、「その計算方法を明らかにする方法」(信託法34条1項2号ロ)により行うことになります。

①について例えば、不動産の権利は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(民法177条)ため、不動産については、受託者名義への所有権移転登記及び信託登記を行うことになります。あくまで信託目的で登記を行うことになるため、信託目録が作成されることによりその内容が登記で公示されることにはなりますが、形式上は受託者名義となることから、直接管理や(信託契約内容により)売却を行うことが可能です。
②については宝石類など高額な物の場合もあり、専用の金庫などで管理する方法が考えられます。
③については例えば金銭を預かる場合は、信託用の受託者名義の「信託口口座」を作成して、その口座で管理することが通常です。受託者の既存の個人口座で預かると固有財産と混ざってしまいますし、仮に新規で受託者の通常の口座を作成して管理すると、受託者が先に亡くなってしまうと凍結され受託者の相続財産となってしまう可能性があり、また受託者の債権者が差し押さえできるなどの点で問題が生じます。信託口口座は銀行に信託契約の内容を提出した上で作成を行うため、上記の問題が生じず(倒産隔離機能など)、また仮に受託者変更により財産管理を承継する場合もスムーズに行うことができますので、信託目的を達成することが可能です。

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