任意後見契約

任意後見契約とは、将来的に認知症など本人の判断能力が不十分となった場合に、具体的な内容につき、受任者に後見人として行ってもらうことをあらかじめ委任する契約をいいます(任意後見法第2条1号)。

例えば、現状は自身で不動産や預貯金を管理しているが、将来的には子供(受任者)に管理を任せたい場合などです。実際に認知症等になった場合には、複雑な物事を判断することが難しくなってしまうため、任意後見契約自体は判断能力が低下する前に、将来に備えて行います。

似た制度として成年後見制度がありますが、成年後見制度はすでに本人の判断能力が低下している場合(事理弁識能力を欠く常況にある者・民法第7条)に、財産管理全般について後見人を付す制度です。すでに本人の判断能力が低下した後は、本人の判断や意思を確認することが難しく、後見人としても財産管理等を行うにおいて、判断が硬直したものとなってしまうため、かえって本人のためにならないこともあります。また、誰が後見人となるかは家庭裁判所が判断をするため、本人の子供が後見人になりたいと思っても認められず、専門職などの第三者が後見人となる可能性もあります。

任意後見契約は通常の契約と異なり、公正証書でする必要がある(任意後見法第3条)ため、原則的には公証役場にて行います。公証人によって本人確認が適正に行われるため、本人にはその意思がないのに受任者が契約書を作成して、本人の望まない任意後見契約をしてしまうということができない様になっています。

任意後見契約の締結がされると、公証人が法務局に登記を嘱託します(公証人法第57条の3第1項)。登記がされることで、任意後見受任者や任意後見人は登記事項証明書をもって自己の地位・権限を証明することが可能となります。

また、任意後見契約が実際に効力を有するのは、本人の判断能力が低下した場合に、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任の申立てをし、「任意後見監督人が選任をされた時」(任意後見法第2条1号)になります。(そのため、任意後見監督人選任前は、あくまで任意後見受任者はまだ任意後見人ではありません。)任意後見監督人は、財産目録の提出させるなどにより任意後見人の監督を行い、任意後見人の行為の適性を担保します。

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